養肝漬(ようかんづけ)とは、伊賀盆地特産の白瓜の芯を抜き、しそ・生姜・大根・胡瓜など刻んだ物を詰め、たまり醤油で2年自然熟成させたお漬物。武士の肝っ玉を養う漬物という意味で、養肝漬と命名された忍者の携帯食ともいわれていわれる伊賀を代表する名産品です。
創業は慶応元年(1865年)。150年以上もの間、養肝漬を造り続けています。
養肝漬を造り始めてから現在まで、さまざまな時代を乗り越えてきましたが「宮崎屋の根幹は変わっていない」と、6代目社長は言います。
養肝漬を造るために代々受け継がれてきた木桶には、宮崎屋独自の発酵菌が住みついているおかげで、今も昔も変わらぬ美味しさの養肝漬を造ることができます。
今まで「温かいご飯と合わせて食べてください」と売り出していましたが、お客様の生活習慣とニーズが変化していることに気づきました。昔と同じものを造り続けることは「伝統」ではなく「伝達」にすぎない。伝統とはコントロールするものだと考え、養肝漬を使用した新しいヒット商品を次々と生み出しています。
数々の歴史に触れることができる宮崎屋
伊賀地方は、布引山系・鈴鹿山系を背後に、伏流水に恵まれている場所です。さらに伊賀盆地は、大きな寒暖差と霧深い気候で、お酒や漬物などの醸造に対し、伊賀特有の影響を与えています。このような地で、2年間という歳月をかけて、養肝漬は造られているのです。
宮崎屋の漬けこみ蔵には、明治初期より使い続けている約3.5トンもの巨大な樽が9基あります。予約制となっておりますが、漬け込み蔵の見学も可能です。また、宮崎屋店内では、昔の商売道具や木の看板、個人的なコレクションである土鈴や絵馬、戦前の絵ハガキ、明治時代の雛飾りなどをご覧いただけます。
1957年に南極観測隊が養肝漬を持って行った際、昭和基地の前で隊長が養肝漬の旗を掲げ撮影してくれたという、貴重な記念写真もあります。
養肝漬宮崎屋として、養肝漬に軸足を置いた商品開発をしています
養肝漬は発酵度の高い漬物です。宮崎屋の強みとは何かと考えた時、独自の発酵が強みなのだと思い至りました。
ある時「乳製品」と「養肝漬のお醤油の発酵の味」が合うのではないかと、試しにアイスクリームやクリームチーズと合わせてみました。思っていたよりもずっと美味しく、これがきっかけで、ヒット商品「たまりしょうゆアイス」と「宮崎屋ベーグル」が誕生したのです。
新商品がヒットすると、商品開発が楽しくなります。お客様も「今度は何作るの?」と楽しみにしてくれています。
ただ、一つだけ気を付けていること、それは「一つの商品をシリーズ化しない」ということ。
ヒット商品をシリーズ化してしまうと、その商品のお店となり、養肝漬宮崎屋ではなくなってしまいます。今後も、養肝漬に軸足を置いた商品開発を行っていきます。
基本情報
住所: 〒518-0869 伊賀市上野中町3017
電話番号: 0595-21-5544
ウェブサイト: http://www.ict.ne.jp/~myzky/
営業時間: 8:30~18:30
定休日: 8月と12月を除く毎月第一木曜日、1月1日
公共交通機関でのアクセス: 伊賀鉄道上野市駅より徒歩5分
車でのアクセス: 名阪国道上野ICより上野市街方面へ5分
駐車場: 駐車場 6台(無料)
取材後記
伝統を受け継ぎながらも、社業を通じていかに面白いことができるか。
お話をお聞きするたび、夏休みを楽しむ少年のような御当主の笑顔に元気づけられました。
「楽しい」を事業活動の中で実現してくためには、スタッフ全員が共有できるぶれない軸が芯にあることが、とても大事なことのように思います。宮崎屋にとっては養肝漬がそれにあたるのではないかと感じました。
新商品の開発にも積極的で、宮崎屋が開発したベーグルは、養肝漬、パン、チーズとすべて発酵食品を掛け合わせた作られています。同じく新商品のアイスを口に運んでみると、ほのかな醤油っぽさ、みたらしやキャラメルのような風味を感じられます。どれもとても意外でしたが、大変美味しいものでした。
取材を通して伝わってきた、基礎となる伝統のコアを決して曲げずに新しいことにチャレンジする姿は、これからのさらなる発展を予感させてくれます。
宮崎屋の取り組みを、地域発展のひとつの成功例として皆さまにも知っていただければと思います。