エクスペリエンス三重県応援団

 

明治20年、初代熊市の創業から続く尾鷲市の三重県指定伝統工芸品「尾鷲わっぱ」。

良質な厳選尾鷲ヒノキを、手間隙かけて削り、丁寧に曲げ、桜の木の皮で縫い合わせ、天然素材の漆を幾重にも塗り込む。45もの工程をすべて手作業で仕上げるわっぱは、人工的な素材では決して味わうことの出来ない美しさ。天然素材と手づくりが生み出すご飯のおいしさ、自然と匠の技が調和した逸品です。

 

わっぱは元来、山で仕事をする「山師」が弁当箱として使用していました。ヒノキで作られているわっぱには抗菌効果があり、内側は漆塗りが施されているため、炎天下でもご飯が腐りにくいという特徴があります。さらに、ぬし熊では化学的な薬品を一切使わず、代々受け継がれてきた方法で、一つ一つ丁寧に手作業で作っています。
ぬし熊のわっぱはご飯が美味しいと評判で、現在ではサラリーマンや主婦、学生など、幅広い層から支持されるようになってきました。冷たいご飯が食べられないと悩んでいた高校生が、尾鷲わっぱに詰めたご飯なら食べられると言って、お小遣いを貯めて買いに来たこともあるそうです。
細部まで徹底的にこだわり抜いて作られた尾鷲わっぱ、丁寧に使えば100年も使用できるほど丈夫な逸品です。

 

 

最後の職人が作る尾鷲わっぱ、それを支えるのは上質な「尾鷲ヒノキ」

 

明治二十年創業のぬし熊、四代目鹿峰は尾鷲わっぱを作り続けている、最後の職人です。ある日、四代目が尾鷲わっぱの修理を受けたのですが、それは初代熊一が100年以上前に作ったものでした。大変驚きましたが、丁寧に修理をし、漆を綺麗に塗り直したところ、新品と見違えるほどになったのです。

この尾鷲わっぱの高い耐久性は、「尾鷲ヒノキ」が支えています。その材質の良さは古くから有名で、剛性の高さに加え、美しい木目と緻密な年輪が特徴です。ぬし熊のわっぱは、尾鷲ヒノキの厳選した上質部分を使用して作られています。

なお、ぬし熊が扱う尾鷲ヒノキはFSC認証を受けています。これは、FSCマークの入った製品を購入することで、世界の森林保全を間接的に応援できるシステムです。持続可能な社会の実現に貢献できるということを意味しています。

 

 

わっぱ作りへの曲げられないこだわりと、現代の暮らしにマッチする柔軟性

 

わっぱは、穴を開けて作っているので、本来なら水漏れして当然のものです。しかし、ぬし熊のわっぱは水漏れしません。隙間なく木材を組み合わせた上に、漆を塗ることで、高い防水性能を実現しているのです。

もっと長持ちするわっぱを作りたい、という四代目の強いこだわりから、昔から伝わる四十五もの制作工程が、現在では更に増えています。

「制作工程が省けたらいいんやけど、省くよりだんだん増えてきた。長持ちさせるには仕方ないしなぁ」と四代目は笑います。

わっぱ作りの一番の喜びは、完成した商品をお渡しした時、お客様から笑顔を頂けること。
おひつや茶器など新しい分野にも挑み、近年では電子レンジ対応の弁当箱やおひつなど、伝統を生かしつつ時代に合わせた新しい漆器の創作にも取り組んでいます。

 


基本情報

住所: 〒519-3625 三重県尾鷲市大字向井493-15

電話番号: 059-722-9960

ウェブサイト: https://nushikuma.com/

営業時間: 9:00~18:00

定休日: 不定休

公共交通機関でのアクセス: JR紀勢本線 尾鷲駅下車 車で10分

車でのアクセス: 紀勢自動車道「尾鷲北IC」を降りて約10分(名古屋より約2時間30分)

 


取材後記

御当主は寡黙な職人肌という印象。取材を通して御当主の職人としてのこだわりや、わっぱに向き合う姿勢が、「尾鷲わっぱ」という伝統工芸品を支えているのだとすぐにわかりました。

一方で継承していくことの難しさも。ただ、自分の代でなくなるならそれでもいいと、継承以上に現在の自分が作るものに対する責任が強い名工は言います。

かつては弁当箱として必需品だった「わっぱ」は、プラスチック製品などの代替品によって高価値路線にシフトせざるを得なくなりました。このこともあり現在は、先代から引き継いだ時と比べて作業工程が増えているとのことです。

必需品が伝統工芸品となり高価値路線にシフトした例は、他に亀山の関宿、桶重などがあり、いかに地域で作られているものの良さを地域の人らが共有しあい、高めていくか、伝統工芸品の在り方について考えさせられる取材になりました。

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