江戸時代から愛される逸品
三重県の伝統工芸品のひとつ、日永うちわ。
東海道五十三次の43番目の宿場である四日市で、伊勢神宮参拝客のお土産として約300年前から親しまれています。
軽くて持ち運びやすく、腐らないうちわは、旅行のお土産にぴったり。
1本の竹からつくられる日永うちわは、その品質と美しさから全国的に名を馳せたと言われています。
日永うちわの特徴は、1本の竹を編んでつくり、持ち手と扇面の間にかご状の空間があること。
一般的な持ち手と扇面が別々につくられるうちわと違い、加工が難しく高度な技術が必要です。
立体的に編まれたうちわは非常に柔らかくしなり、僅かな手首の返しを心地よい風にして伝えてくれるのです。
また、1本の竹からつくれるように細い”めだけ”を材料にしており、その丸い持ち手が優雅に手に馴染むのも魅力のひとつです。
うちわには「人をあおぐもの」としての起源があります。
扇子は自分をあおぐもの、うちわは人をあおぐもの、として生まれました。
日永うちわの心地よい風には、人を思いやる気持ちやおもてなしの心が込められているのです。
親子で繋ぐ、修行10年の職人芸
日永うちわを長年つくり続けている、株式会社 稲藤(いなとう)。
四代目代表である会長の稲垣嘉英さんと息子で社長の雄介さんを中心に、代々の伝統を守り続けています。
嘉英さんも雄介さんも、初めは会社を継ぐことを考えていなかったそう。
しかし幼少期から触れ合った職人芸に対する尊敬や誇り、「自分が継がなければ、日永うちわの火は絶えてしまう」という使命感から、稲藤と共に歩むことを決めました。
日永うちわのつくり手は「貼りに3年 竹先10年」、1人前になるのに10年以上の研鑽が必要だと言われています。
先代の元で修行を積んだ会長の嘉英さんを中心に、繊細で緻密な技術を繋ぎ続けています。
うちわの新しい存在意義
令和でも愛され続けるためのチャレンジ
以前は涼の手段として重宝されていたうちわも、扇風機やエアコンの台頭によりかつての存在意義を失いつつあります。そんな中で、令和の時代にあるうちわの姿を模索し続けている稲藤。
「うちわ自体が日本から消えることはないと思う。広告宣伝物として、夏の風物詩として、まだまだ親しまれている。ただそれだけではなく、文化として愛され大切にしてもらえるものを目指していきたい。」と、雄介さんは語ります。
その言葉通り、店頭とオンラインショップには新商品がたくさん。
中でも人気なのは、根本のかご状の空間に香り玉を入れたうちわ。
優雅な風とともにふわっと香るアロマが評判を呼んでいます。
うちわの起源であるおもてなしの心と、日永うちわの特徴的な形状を組み合わせた稲藤の看板商品です。
うちわ作りは自分たちの誇りであり、芯になっている。
それと同じように、四日市の人たちにも伝統工芸品の日永うちわを通してもっと地元のこと好きになってもらいたい。
嘉英さんと雄介さんはそんな想いを胸に、令和で生き続ける日永うちわを目指しています。
企業名 | 株式会社 稲藤(イナトウ) |
代表者 | 稲垣 雄介 |
所在地 | 三重県四日市市日永4丁目4-48 |
電話番号 | 059-345-1710 |
設立 | 明治14年 |
公式HP | https://inatoh.co.jp |