松阪市曲町の鉄工所の奥に、ひとつのエスカルゴ研究所があります。たった一人で40年間研究を続ける高瀬俊英さん。世界でも類を見ないエスカルゴ養殖を可能にした軌跡を取材しました。
困難を乗り越え、
エスカルゴ研究の道へ
エスカルゴはフランスを中心に世界で親しまれている食材ですが、乱獲が原因で100年前から絶滅の危機に瀕しています。現在フランスでは捕獲が禁止されており、市場には缶詰の代替品が出回っています。
幼少期から生物が好きだった高瀬さんは、あるときエスカルゴの魅力に取り憑かれ、「育ててみたい」と思い立ちました。しかし、田畑の野菜を食べるエスカルゴは”害虫”とみなされ、日本への輸入は厳禁。害虫と呼ばれる生物も、人間の食料であれば”有用生物”として輸入ができるため、7年かけて許可を取得しました。その後40年間、エスカルゴの養殖をたった1人で研究し続けています。
こだわれるところ全てにこだわる。
最高の環境を実現した徹底ぶり。
高瀬さんがエスカルゴを養殖する牧場には、40年間の研究成果とこだわりが詰まっています。
ハウスは空調を使わず、お湯を使用した床暖房で温度,湿度を徹底管理。また、万が一にも外部へ出ないように地下までネットを張り巡らせています。
エサは20年かけてたどり着いた独自のもの。大豆を原料に20種類のビタミンやカルシウムを混ぜ込んでいます。この配合や細かさにたどり着くため、ミクロの世界で調整をしたそうです。また、繊細なエスカルゴは洗剤を受けつけないため、食器はすべて手作業で洗っています。
最高の環境を整えるため、産卵場はフランスの森を想定した土壌を完全再現。エスカルゴのことを細部まで研究し尽くして作りあげた、高瀬さんにしかできない牧場です。
高瀬さんの作るエスカルゴは、缶詰が人気の国分トラストから高級缶詰シリーズとして発売されています。担当の中野茂さんは当初、エスカルゴの魅力があまりわからなかったそうです。「工場があるのは知っていたが、自分で食べたいとは思わなかったです。でも高瀬社長と出会い、その徹底ぶりを見ていると感動してしまって…」(中野さん)
缶詰の商品化にあたり、ここでも高瀬さんのこだわりが発揮されました。フランスから文献とレシピを取り寄せてソースを研究し、自分だけのレシピを開発。さらに、ニンニクやエシャロットなど材料を全て無添加で自分で栽培し、エスカルゴを最大限に引きたてるソースをつくりあげました。
今までにない缶詰は話題を呼び、1年で3,000缶の予定でスタートしましたが、発売4ヶ月ですでに4,000缶の注文が入っています。これからますます人気が高まることが予想されています。
まだ見ぬ未来へ進み続ける、
誰よりも強い想い。
高瀬さんの次の夢は、エスカルゴの養殖が世界に広まっていくことです。
昨今、将来的な食糧難が世界中で問題視され、昆虫食の研究が進んでいます。また、途上国では餌代のかかる牧畜や養鶏が根付かず、貧困から抜け出せない状況が続いています。
少量の餌で安価に養殖がすすめられる高瀬さんのエスカルゴ養殖は、その問題を解決する可能性があるのではないか、と想いを秘めているそうです。
「周囲の人は、道楽だと思っていると思います。でも、僕は作った以上必ずビジネスになるまで育てる。(創業してから)16年間、1度も休んでいません。休むときは死ぬとき。それも、棺桶から起きてこよう、くらいの気持ちでいます。40年ずっと研究が続けられたのは幸せです。」(高瀬さん)
世界中で唯一無二の研究所は、私たちの想像を超える未来を切り拓いていくのかもしれません。
会社名 | 三重エスカルゴ開発研究所 |
所在地 | 三重県松阪市曲町78番地 |
電話番号 | 0598-21-6417 |
公式HP | https://matsusakamomen.com |