三重県の中部に位置する街、松阪。
江戸時代から商人の街として栄え、由緒ある歴史と文化が根付く豊かな町です。
今回は松阪の歴史と文化を感じられる名所をご紹介します。
豪商のまち松阪 観光交流センター
松阪有数の豪商が軒を連ねる魚町の中心に位置するこちらのセンターは、松阪の歴史や文化、食など、さまざまな魅力を紹介しながら、街歩きの案内やお土産までそろえた施設です。
目玉のひとつは、江戸時代の松阪の様子を再現したミニチュア模型。道路を横切るのが難しいほど賑わっていた”豪商のまち松阪”を感じることができます。
松阪は伊勢神宮へお参りをする旅人の通り道。江戸時代は旅人が「ええじゃないか、ええじゃないか」と賑やかに歌い踊りながら道を歩き、地元の商人たちがお茶や握り飯を無料で振る舞っていました。お金や食べ物がなくても、ひしゃく1本だけを持って松阪に来れば、誰でもお伊勢参りができる。そんな人情味の溢れる文化を、街の豪商たちがつくり出していたのです。
ミニチュア模型の前で目線を落とし、当時の旅人の目線で松阪の街並みを見てみると、歌や賑やかなかけ声が聞こえ、そこにある人の優しさまで伝わってくるような気がします。
旧長谷川治郎兵衞家
小津清左衛門家
長谷川家と小津家は松阪有数の豪商です。
深い歴史を持つ商屋造りの本宅が、どちらも一般公開されています。
長谷川家は、現代まで350年続く木綿問屋。当時は農家の人々が織る木綿を江戸に届けていました。長谷川治郎兵衛の代には江戸の大伝馬町に5軒の店を構え、本宅はその繁栄振りをうかがうことができます。
質素倹約を理念としていた長谷川家では華美な装飾はないものの、目立たない部分に丁寧に手を入れ、ひとつひとつの素材も貴重なものを使用し、良質なこだわりにあふれています。立派なうだつが上がる悠然とした家は、商家の変遷をいまの時代に伝える貴重なものとして評価され、平成28年には国の重要文化財(建造物)に登録されました。
小津家は江戸にお店を持つ紙問屋です。長谷川家と並んで裏千家を支えた家としても知られ、たくさんの茶道具や文献が展示されています。特徴の一つは、展示品のほとんどが当時の綺麗な状態を保っていること。この家で暮らした人々の、丁寧に手入れをしながら、大切に後世へと文化を繋ぐ、人柄や暮らしぶりが伺えます。
御城番屋敷
松坂城跡
石畳の両側に武家屋敷がずらりと並んだ一角。松坂城裏門跡の先にある、ひときわ目を引くのが、御城番屋敷です。江戸末期に松坂城を警護する「松坂御城番」の役職についた武士たちが、和歌山県から移り住むためにつくられました。いまでも子孫の方が住まわれ、維持管理を行っています。石畳の両側に、美しく整えられた生垣と歴史を感じさせる武家屋敷が並び、江戸時代の空気を感じられる貴重な場所です。
御城番屋敷から少し歩くと、松坂城跡にたどり着きます。お城などの建物はありませんが、約430年前につくられた立派な石垣が今も残っています。石垣の上からは松阪の街を一望できる、松阪の歴史と文化を感じられる名スポットです。
江戸時代、人情味と活気あふれる豪商の街だった松阪。
いまも多くの人が街を愛し、美しく貴重な歴史と文化を守り続けています。