御食国(みけつくに)伊勢志摩の食文化に欠かせない鰹節。
波切地区は古くから伊勢神宮の重要な御食地(みけち)であり、鰹節は神饌(しんせん)として献上されていました。
かつおの天ぱくは、江戸時代中期から伝わる手火山(てびやま)製法で燻しかつお「波切節」を作っています。その鰹節からは「澄み切った生臭みのない出汁が採れる」と、京都の茶会席や海外のフレンチの名店など、国内外の一流に選ばれる逸品として知られています。
かつおの天ぱくは、古くから伝わる「手火山(てびやま)製法」で鰹節を作っています。この製法は、魚一匹一匹ごとに異なる性質を見極めながら火加減の調整ができるため、水分量を極限まで取り除けるのです。そして、手間を惜しまず、細部までこだわり抜いて作った鰹節からは、香りのいい、澄み切った美味しい出汁が取れます。
江戸時代に作成された『諸国鰹節番附表』の行司役に先祖の名前を見つけました。全国の鰹節のランキングを決める大役を頂いていたことを知り、この火を消すわけにはいかないと決めました。
ここ波切地区は、伊勢神宮の神様に捧げるものづくりをしてきた地域として、何千年もの歴史があります。自然の循環を保ちながら、日本人の身体に必要なものをつくる。それが鰹節作りの原点です。
伝統的な「手火山製法」を通じ、日本の朝食の原風景を伝えていきたい
当社は伝統的な「手火山製法」で鰹節を作っていますが、鰹節を同じ製法で作っている工場は全国で10軒しかありません。
昭和21年に大王崎灯台を望む高台に建てられた当社の「鰹いぶし小屋」では、この地方に伝わる鰹節の歴史、鰹節が出来上がるまでの工程を学んでいただける、貴重な機会を設けています。鰹いぶし小屋を見学した後には、土鍋で炊かれたごはんに山盛りの鰹節をかけた、自慢のおかかご飯も試食して頂けます。当社がおかかご飯を振る舞う理由、それは日本の朝食の原風景を伝えていきたいという思いがあるからです。
美しい自然と情緒豊かな街並みを持つ大王町は、「絵描きの町」と呼ばれています。
当社にお越しの際には、多くの画家に愛された大王町も、ぜひ堪能していってください。
「本物」を作り続ける、それが御食つ国のものづくり
ヒット商品を目指したものづくりではなく「本物」を作り続ける。
それが、ここ伊勢志摩の“御食つ国”のものづくりだと考えています。
鰹を燻す際に重要となる薪にも強いこだわりがあります。この地域で取れる、備長炭の原木ウバメガシの間伐材を利用して、最高級の燻しを行っています。これは何千年も前に作られた仕組みであり、山が再生することにより、海も生き返るという自然のサイクルに則った方法なのです。
私たちには、この地域の素晴らしさ、伊勢志摩のポテンシャルの高さを多くの方に知ってもらいたいという思いがあります。伊勢志摩の人々にも、世界のトップランナーに認められるレベルのものづくりをしている場所だと、自信を持って、誇りを持って、積極的に情報発信して頂きたいです。
基本情報
住所: 〒517-0603 三重県志摩市大王町波切2545-15
※鰹いぶし小屋見学はこの住所ではありませんのでご注意ください。
ウェブサイト: http://www.katuobushi.com
取材後記
「昔から続いてきた伝統や歴史を掘り起こすことが、一番の宣伝になる。」
地域ビジネスとしての側面から見た場合、地域の良さをしっかり発信することが会社の発展につながる、そこに面白さがあるともいえます。
「かつおの天ぱく」はまさにこうした考え方で、歴史を掘り起こし価値を訴求しているひとつの例といえるでしょう。
現在はコラボレーションへの取り組みも多く、特にかつお燻し小屋は世界より多くの著名人が見学に訪れる施設でもあります。その様子からは、目を開けられないほどの煙と向き合いながらも良いものを作ろうとする姿勢が、ひしひしと伝わってきます。
こういった取り組みのひとつひとつが商品への絶対的な信頼に繋がるものなのだと、取材を通して知ることができました。
鰹節は和食の基本となっている、出汁(だし)の重要な要素。「かつおの天ぱく」の魅力が伝わることは、日本の和食文化の価値、歴史を世界に訴求することに他ならないと思います。私自身も、実際にその場を訪れインタビューし、ねこまんまを実食させて頂いたときには、その深い味わいの虜になってしまいました。
決して安いとは言えない商品でも、その背後にあるストーリーやそこに向き合う人々の背中をみると、その想いがかけがえのない価値に通じているのだと、改めて実感することができました。