昔ながらの伝統を守る
希少な醸造所
愛知県、三重県、岐阜県の東海3県でのみ生産されている、豆味噌という味噌があります。赤みがかった焦げ茶色で、深い旨味の中に少し苦味と酸味があるのが特徴です。一般的な味噌が米や麦を使用するのに対し、豆味噌の原料は塩、大豆、水のみ。この3つを使い、じっくりと長期熟成させる、東海地方の食文化には欠かせない調味料です。
三重県鈴鹿市にある東海酒造は、今では珍しい天然醸造で豆味噌をつくり続ける希少な醸造所です。昔ながらの木桶を使い、豆味噌と、味噌から自然分離されるたまり醤油を生産しています。蔵元によって熟成の期間は様々ですが、東海醸造は約3年半の超長期熟成。木桶の中で3年半寝かされた豆味噌は、塩の角がとれた”塩慣れ”と呼ばれる状態に。まろやかで豆味噌特有の酸味と苦味があり、深く力強い旨味が口の中に広がる、他にない味わいをつくり出しています。
シンプルだからこそ難しい、独自の醸造方法
3年半の長期熟成は、そう簡単なことではありません。木桶の中に入るのは大豆麹と塩水のみ。保存料などは一切添加しないため、隙間に空気が入ると大豆に含まれる油はすぐに劣化してしまいます。それを防ぐため、蔵人が3人体制で桶の中に入り、一歩一歩踏み固めていきます。そうして環境が整えられると、木桶の中で微生物が発酵を促し、長時間をかけて味わい深い豆味噌をつくり出していくのです。
美味しさの秘密は、原料の寝床となる木桶にも。約2トンの大豆麹が入る巨大な桶は、釘などを一切使わず木を丸く成形してつくられています。自然のものだけで使い、液体が漏れ出ない精巧な木桶をつくるには、高度な技術が必要です。さらにタガに使われる竹も特別なもので、専門の職人でないと編むことができません。
味噌づくりで繋がる、人の想い
これだけの手間と時間をかけてつくられる東海醸造の商品は、決して安価とは言えません。その中で醸造家の本地猛さんが大切にしているのは、対話です。醸造をするときは微生物との対話を、商品を売るときはお客様との対話を何よりも大切にしているそう。
味噌づくりは、力作業も多い重労働です。それを「大変だな、嫌だな」と思わず、「微生物が3年半の間心地よく過ごして活動してくれたら嬉しい」という気持ちでやり切る。すると、美味しい味となって返ってくる。見えない相手との対話が、他にない味わいを醸し出せる秘訣なのです。
そして、その価値をお客様に直接伝え、信頼関係を築いていく。「味噌ひとつで人間関係が深まる。それが本当に楽しい。」と本地さんは話してくれました。
平成の時代は”時短”が価値として選択され、味噌も即席で食べられるものが喜ばれていました。令和になり旨味をゆっくりと味わうゆとりが再注目されています。そんな価値観をお客様と共有し、深く長く愛されるよう、昔ながらの自然醸造をブレずにやっていく。そんな想いが、東海醸造の根底には流れています。
基本情報
会社名 | 東海醸造株式会社 |
住所 | 〒513-0815 三重県鈴鹿市西玉垣町1454 |
電話番号 | 059-382-0001 |
営業時間 | 8:30 ~ 17:00 |
定休日 | 土日祝 |
公式HP | http://www.tokaijozo.com |